「Light years」/ ライナーノーツのような制作日誌Ⅱ

「少年の日」の制作日誌を公開後、わりに反響がありました。

せっかくなので一作目も振り返ってみます。

現在は三作目、冬のアルバムがもうすぐ完成するところ。このあたりで、初心を思い出してみるのも良いかもしれない。

01.Light years

幕開けを飾るライト・イヤーズ。
輝かしい一年の為に
「ピアノとビート」という
真っ直ぐな直球を表題曲とした。
"春夏秋冬に一枚ずつのアルバムを作る"
挑んだことのないチャレンジがここから始まる。
全てが作りたての新曲である。
アルバム一枚10曲前後として、
4枚分、40曲の新曲を一年で制作していく。
コツコツといこう。
しかしながら全国30公演ツアー。
その他ライブや制作仕事もわりと立て込んでしまい
北海道で集中して制作する時間は限られていた。
北国の部屋で一人、
日々作っては、ゴシゴシと推敲を繰り返した。
久しぶりにビートを取り入れて
Apple musicの登録では"ヒップホップ"というジャンルでのリリース。
(配信リリースをする際には、何かしらジャンルを登録しなければいけないらしいので、敢えてそこを選んだ)
「Nujabes Pray Reflections」を経て、
MELODICA以来10年ぶりのビート曲。
だからと言って力を込めすぎて 
エモーショナルになりすぎないよう。
このアルバムに課したテーマは
「抑制」と「風通し」である。


02.残照

英語ではアフターグロウとも呼べる曲名。
けっこう玄人好みの曲かと思っていたが
意外にも好んで聴かれているようだ。 
後半まで、グッと我慢。
リズムが入る瞬間、感情の沸点がくるように。
夏の終わりの光。


03. sunset waves

わりに気に入っている。
前半にサンプリングネタとなる
ネタ元のギターソロをみせておく。
その後さりげなく、そのギターが徐々にサンプリングされ、リズムを刻んだビート曲へと変化する。
まるでサンプリングして曲になるまでのヒップホップの工程を曲中で見せていくような構成。
ギターとビートだけのリズムが心地よい。
夏の海岸線。
来年の夏も海をドライブしながら
また聴けたなら、
この制作の日々を思い返すことだろう。


04.ORFE

オルフェ。
オルフェウスとはギリシャ神話で音楽の神様アポロンの子供の名前。
彼が琴を奏でれば、動物や獣たちさえもおとなしくなったという。
優しめなギター・フレーズはPrayで弾いていたある曲のセルフ・リサンプリング。
フルートのメロトロン。
ディレイの効いたピアノ。
オートフィルターが擦るスネア。
夏の幻想。


05.to the SEA

林を抜ければそこはもう海。
ジャック・マイヨールが愛した唐津に惹かれ、
昔訪れたことがある。
即興的なギターを重ねて、軽やかなパーカッションを。
あまり作らないタイプの曲かもしれない。
アルバムの中盤で、ふう、と深呼吸できる様な
間奏曲的な役割。


06.green grass

「思い出のグリーングラス・オブ・ホーム」
と言う曲が好きで、そこから曲名をオマージュした。
夏の午後はどうしても
このような微睡んだ心持ちになる。
このあたりの制作段階から、ベースラインを考えることに興味を持ち出している。
アンビエントなループとビート。
窓辺のテーブルには
水滴がたくさんついた氷の入ったグラス。
回りっぱなしの扇風機。
カランと音を立てて氷が溶ける。


07.夏のピアノフォルテ

「夏の」
という言葉をどこかの曲名に入れようと思っていた。
本当は2曲目の「残照」が、「夏の残照」という
仮タイトルだったのだが、7曲目のこちらに使用した。
唯一のピアノソロ。
北海道の街でたまに弾いている、
海が見える公民館のピアノでレコーダー簡易録音。
海を眺めながらの即興演奏。
調律しても、もう古くなったおじいさんのグランドピアノで。


08.Northan Sights

orbeのアルバム曲をサンプリングしている。
僕が作曲を担当した曲。
どの曲かわかるだろうか。
当ててみてほしいので、
答えはここには書かないでおこう。
(ネタ探しとしては、わりに簡単です)

エレキベースを本格的に取り入れて
ベースラインに凝り出している。
個人的には、あまりゴリゴリ動くより
アンサンブル的に気持ちよく気の利いたベースが好きだ。
チャーリー・ヘイデン、レイ・ブラウン、、
大好きなベーシストはたくさんいる。
特に昔からミシェル・ンデケ・オチェロのファンです。
この曲はTHE NORTH FACE sphereのPV映像
にも使用された。
アルバムでは最も推進力のある楽曲。


09.讃美歌ひとつ

アルバムで最も大切な曲。
ともすると
「綺麗ではあるが、やや淡々としている」
とも言えるアルバムなのだが、
ノースフェイス店内で毎日流れることも考え
エモーショナルになり過ぎず、
抑制して制作した意図があった。

暑い夏の東京。
訪れた人に涼しげな心持ちになって欲しかった。
スタッフさんが毎日聴いても、耳が疲れないように。
一作目ではそのコンセプトを大切に作ろうとしている。

その抑制が「少年の日」で
少し解放されたのかもしれない。

と言うのも一枚目を作り、
実際に店内で聴いた感触で
「もう少し解放してもよいかも」と感じたのだ。
お店のBGMでありつつも、
アルバムとしてリリースもするという
今回のプロジェクトにおいてバランスの難しいところ。

普段のエモーショナルな部分を
ひとまず封印して作ったという意味では、
僕のアルバムの中で後々、
特殊な立ち位置になるのかも。
何年か時間が経って聴くと
噛みごたえが出てくる種類のアルバムなのかも知れない。
でもラストはやっぱり
静かなる、エモーショナルになった。なってしまった。
終わりの曲を大切にしたい。
いつかライブアレンジして
演奏する日が来るかもしれないですね。
その時、この曲の真価が見えるだろう。

昔の宣教師の演説録音と、
ある讃美歌をサンプリングしている。

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